IMTS 2018

シカゴで開催されたIMTS(International Manufacturing Technology Show)に行ってきました。工作機械各社、SIERなどからMTConnectOPC UAを活用したモニタリングツールがそこかしこで展示されていました。一昨年はまだ知る人ぞ知るという存在であったMTConnectも今や当たり前のものになったようです。あまりにもそこかしこでMTConnectを活用した工作機械の稼働状況を“見える化”したモニタリングツールが仰々しく展示されているのを見ていると、機械の稼働状況だけを見える化できたことで一体何が可能になるのだろうか?という疑問が沸いてきました。私自身工場の“見える化”を拙著「スマートファクトリー」の中で提唱してきていますが、単に機械だけでなく、様々なデータの因果関係を持つことを前提としていますし、その点が一番重要だと考えています。ところが展示されているものはそのような関係性の構築がされていないものが殆どです。

 

「稼働率100%達成」がゴールではない

例えば、工作機械の稼働状況が見えるようになったとします。一般的には稼働中、停止中(電源OFF、電源ON)、エラー停止中に分けられています。ところが稼働中が50%だということがわかったとしてそれは問題であると判断できるのでしょうか? 一概にはできないと思います。設備をできるだけ稼働させるのがいいことだという考え方があるのはわかりますが、それは、生産能力100%で生産しないとこなしきれないというような生産計画がなければ正しいとは言えません。最終的なゴールは、なにがなんでも100%稼働させるというのではなく、「本来の求められているタイミングで加工ができたのか?その結果として予定された稼働率になったのか?」ということです。稼働率が予定通りであっても、着手、終了タイミングがずれているのであれば前後の工程では仕掛在庫が増えますし、後工程が予定の時刻に作業に着手できなければ、生産リードタイムが長くなります。(結果としてキャッシュフローは悪くなります)

そう考えると展示されているモニタリングの画面はあくまでも単一工程での、稼働率至上主義に基づいた見える化にすぎないわけです。(もしくは、単一工程の状況を複数工程について並べただけとも言えます)

 

“見える化”で効果を出すためには?

今まで見えなかったものが見えてくることにより当初は驚きと歓迎が現場にもあるかと思います。しかし、すぐに「それがわかったところで何ができるのだろうか?」ということになってしまうのではないでしょうか。結果、モニタリングの画面は誰も見なくなります。工場の生産性をあげるために工作機械を含め機械の稼働状況をモニタリングするのであれば、生産計画や他工程との連携した形で様々な情報を提供することができなければ、生産性改善にはつながらないということです。設備メーカーでは、生産管理の部分は自分たちの範疇ではないし、そこまでは求めていないということでそのような展示になっているのだと思いますが、本当に効果を出していくためにはもっともっと広く、本質的な視点での考察と表示が必要なのではないでしょうか。