日本製造業の生産管理能力の低下が著しいのが現状である。その主な要因は3つ。

  1. 工場の海外移転に伴い、生産管理を実地で学ぶ場が減少した
  2. 生産管理を構築してきたメンバーの引退
  3. ERPに依存したシステム構築

日本の製造業が、高度成長時代に売り上げの増段とともに生産管理能力もレベルアップさせてきた。しかし、ゼロから管理方法、手続きを考え、作ってきたメンバーはほぼ引退しつつある。一方既存の仕組みを受け取った担当者は、現状をベースに考えることはできるが理論をきちんとマスターしているわけではない。経済環境や、情報技術が急速に変わる中で新しい管理の仕組みを、もしくは1段レベルアップした管理の仕組みを導入しようとした際に企業が壁に直面している。

ユーザー企業だけでなく、それらシステムを構築するパートナーであるシステムインテグレーター、コンサルティング会社においても同様な状況にある。カスタマイズで生産管理システムを構築してきた時代においては生産管理を根底から理解しているコンサルタントやSEが多数存在していたが、ERPなどがもてはやされ中身は理解しなくても、ベストプラクティスが手に入る(極めて怪しいフレーズだが)という流れに乗り、パッケージのパラメーターはいじれてもそのロジックを本質的に理解していないという人間ばかりになってしまった。

IoTを活用したスマートファクトリーの構築をするためには、ユーザー側にも、コンサルタント側にも生産管理をきちんと理解した人材が必要なのである。

数年前から徐々に感じていた問題であるが、ここにきてさらに問題は大きくなりつつあるように思う。20年前、生産管理を勉強しようと思ったら本屋に行けば、実務に即した様々な書籍を手に入れることができたが、驚いたことに現在はそのような本が殆ど見当たらない。どれも大学で習うような理論的な書物ばかりで、実務者が理解できるような視点で書かれているものが極めて少ないのである。

人材の減少に、知識の習得の場の減少が追い打ちをかけている状況である。放っておくわけにはいかないので、少なくとも自社にはきちんとした人材を育成しようと生産管理の研修コースを自社開発した。数百ページにのぼる壮大なマテリアルである。しかしながら、これでもまだ十分とは言えず現在は生産管理専門のパッケージベンダーと実際のシステムをも含めた学習の場を提供できるよう協業中である。