QC活動などによる“改善”が日本の製造業の競争力の源泉の一つであったことは間違いがないであろう。もちろん今でも“改善”は日本の製造業におけるものづくりの“生産性”と“品質”“リードタイム”を支えていることは間違いがない。しかし、20年前、30年前に比べると、経営に対する貢献は減少している。

製造現場で、“改善”を行おうとする場合に、現場のメンバーに見える“数字”は、“作業時間”と“購買費用”である。“購買費用”は購買部であるとか、技術部に確認をしなければわからないので、やはり“作業時間”が現場にとっては一番わかりやすい。

勢い“改善”のテーマは“作業時間”に焦点をあてたものが多くなる。

今まで40秒かかっていた作業が30秒でできるようになった、結果10秒の短縮であり

1日100回の作業が 100 X 10秒 =1000秒、 年間220日の稼働日をかけ年間約61時間の作業削減効果が生まれた。ここに時間あたりの工賃が例えば4000円だとすると4000円をかけて24万円の削減効果が生まれたと計算するわけだ。

ところが、この24万円は本当に会社は効果とし得たのだろうか?殆どのケースにおいてその効果は得られていない。なぜなら人件費の削減効果というのは、作業者が減らない限りは現実には減らないからである。もちろん、余った作業時間を別の作業にあてることができるようになったであるとか、残業をせずに作業が終わるようになったということであればその効果は実際に得ることができるが、そのようなケースはあまりないと思われる。

30年前は、右肩あがりで増産が続いていた上、生産性も低く、実際に効果が出ることも多かったとは思うが、現状を考えると難しい。笑い話のようではあるが、社内全体の“改善”の効果をかき集めると、自社の利益に相当するようなことも起きていると聞いたりもする。

改善自体は、単に“お金”だけの問題でなく、製造現場の意識を高くしていくためには必要なものであるから、お金の効果が薄くなったからと言ってやめるべきものではないが、どうせやるのであれば“お金”にも結び付けることを目指すべきではないだろうか。

当社では、そんな問題を解決するために“Jコスト”を活用した改善活動を推奨している。“Jコストは”は元トヨタ自動車生産調査部部長の田中正知氏が提唱した数式である。トヨタ生産方式=カンバンとして世間は捉えてしまうのであるが、カンバンはトヨタ生産方式の中でのツールの一つであり、トヨタ生産方式を表すものではない、ではその神髄をどう表現したら皆に広く理解してもらえるのであろうか?と考えた上に、文章ではなく数式で表すべきだと考え生み出した数式である。この数式には“JIT”が表現されている。

“Jコスト”を活用し、より会社の経営に直結する“改善”活動を進めていくことがそれこそ“無駄”のない改善活動につながると思う。

Jコストの詳細については関連書籍などを参照ください。