はじめに

前回に引き続き、要件定義工程の各プロセスについて成功のためのポイントを紹介していきます。

各プロセスの成功ポイント

ビジネス要件定義 A-4.要件の合意・文書化

本プロセスは以下2つのサブプロセスに分けて解説します。

  • A-4-1.要件の合意
  • A-4-2.文書化

A-4-1.要件の合意

前プロセスで整理した課題やニーズ(=解決すべき要件)についてステークホルダーに説明の上、要件毎に「今実施する」「今後実施する」「実施しない」について合意をとります。

本プロセスは要件定義を最終化するキモとなります。この段階で議論が発散してしまい、結局システム導入しなかった、というケースが多いです。

・矛盾する要件があり、双方譲らない

・要件はまとめたものの、投資対効果として上層部に承認されない

等、モメゴトが多いプロセスとなります。

成功ポイント12)トップダウンで合意形成を進める

以前のコラムでお伝えしましたが、ステークホルダーにはそれぞれの立場があり、観点が異なり、捉えている課題やニーズも異なります。現場担当者や部長と交渉の上まとめた要件が経営層でひっくり返る、というケースが往々にしてありますので合意形成はトップダウンで進めたほうが手戻りが少なく、効果的です。

経営層、部長、現場担当者がいる場合だと、具体的には以下のように進めます。

①経営層と以下を話し、認識をあわせる

いきなり要件の合意ではなく、まずは進捗報告の形で進め方の合意を得ます。

・要件を洗い出したこと

・全てを実施することは難しいため、優先順位をつけて取捨選択していくこと

・今後要件をまとめるにあたり、

 目的は○○、期待効果は○○なので

 取捨選択の方法は○○(A-3-2.優先順位付けで検討した内容)

 と考えていること

上記について経営層の認識を確認し、進め方の合意を得ます。

また、「投資は○○までしか許容しない」「時期は○○までに決める必要がある」等、取捨選択/合意形成のための境界線を把握できるとより良いです。

②部長と進め方の合意をとる

経営層と合意を得た取捨選択方法に従い進めることについて、合意をとります。

③現場担当者と要件の合意をとる

経営層、部長と合意を得た取捨選択方法に従い、現場担当者の関心事(業務負荷はどうなる?実務上のやり方?等)をおさえながら要件毎に「今実施する」「今後実施する」「実施しない」について合意をとります。

④部長と要件の合意をとる

現場担当者と話した結果を報告し、部長の関心事(業務プロセスがどう変わる?体制変更の要否?等)をおさえながら要件毎に「今実施する」「今後実施する」「実施しない」について合意をとります。

⑤経営層と要件の合意をとる

部長、現場担当者と話した結果を報告し、経営層の関心事(目的との整合性?投資対効果?予算枠に収まる?等)をおさえながら要件毎に「今実施する」「今後実施する」「実施しない」について合意をとります。

成功のポイント13)意思決定機関を用意する

本プロセスは意見が衝突して合意形成に時間がかかる事が多いため、最終的な意思決定機関を予め体制として用意しておくと効果的です。意思決定機関には経営層や業務部門の部長、システム部門の部長を含めることが一般的です。

A-4-2.文書化

合意した要件に対して文書化し、エビデンスとします。

ビジネス要件定義にて作成するドキュメントとしては、

・課題・ニーズ一覧、課題原因分析図、要件一覧

・ビジネスプロセス関連図、新旧業務フロー、業務機能構成表

等があります。

成功のポイント14)記録の周知、経緯も残す

一度決まった要件も、記憶ベースだと後日改めて蒸し返しひっくりかえることがあります。合意した要件は必ず文書化し、記録を残し、関係者へ周知するようにしましょう。

また、要件定義で決まった内容は新システムや新業務を設計する際に重要になるだけではなく、導入後利用時や、次期システムを導入する際に参照されることがあります。その際、「なぜその結論になったのかわからない」となるケースが多いため、その結論に至った背景や会話についても記録を取ることが望ましいです。

次回コラムでも、引き続き「成功のためのポイント」を順次紹介していきます。

<これまでの連載>

要件定義の進め方とポイント(1)

要件定義の進め方とポイント(2)

要件定義の進め方とポイント(3)