ユーザが作る「品質」の尺度と精度

前回は、「品質とは?」について書きましたが、今回は「品質が良いとは?」どういうことか、
また「ユーザが求める品質」について、考えていることをお伝えしたいと思います。

皆さんは、何か製品を購入しようとする時、他の製品と比較してどれか1つを選んでいると思いますが、
数ある同じような製品の中から、何故その製品を選んでいるのかを考えたことはありますか?

例えば、新製品だから最新の機能が備わっているからとか、他と比べて製品仕様が優れているから、
デザインが気に入ったから、評判が良いから、お気に入りのブランドだからとか、いろいろあると思います。

また、自分が気に入らないものを購入することは無いと思いますが、使っているうちに良くないイメージを持つように
なったことははありませんか?

例えば、

  • 普通に使っているだけなのに壊れた、使えなくなる
    一定期間使用すると必ず壊れる とか
  • 使い勝手が悪い(扱いにくい、手数が多いと感じる)
  • 動作が遅い
  • 操作に対する反応が鈍い
  • なんとなく飽きてきた

というようなことがあり、だんだんと製品に対して負の印象を持つようになることはあると思います。

製品を選んでいる時、購入する時、使っているうちに、その製品について色々なことを知るようになり、
印象が良くなったり悪くなったりすることを繰り返すことで、こういうモノだったらこれぐらいの品質
なのかなというような、自分なりの品質の尺度ができていくように思います。

まだその製品を使ったことが無いという場合には、ユーザの期待はそれほど高くないため、この尺度の
設定も曖昧ですが、製品を使い込んでいくうち、買い換えて違う製品を使うほどに、その精度は徐々に
上がっていくのだと思います。

ユーザの内で築かれたこの尺度は、いつの間にかユーザが製品の品質を判断するための基準値として
使われるようになっていきます。

作り手/売り手が考える「品質」とのギャップ

一方、製品を供給する側における(ユーザに提供される)品質について考えてみたいと思います。

一般的なメーカーでは、社内の開発プロセスや社内標準に沿って製品開発を進め、メトリクスを収集して
評価したり、開発状況を判断したりすることで、工程移行や製品のリリースについて判定をしていると思います。

また、製品を作る/売る側としては、その製品がユーザの目に留まらないことには購入してもらえないので、
その存在に気付いてもらうために、他製品との違いや何か秀でた部分を実装することが重要であると考えたり
もしていると思います。

製品を作る/売る側としては、いろいろな理由で付加価値を付けようとしがちですが、はたしてユーザが求めている
ものと同じことなのでしょうか?

ユーザが製品に求めることは、本来その製品が持つべき機能が安定して問題なく使えることであり、それほど新規性
や高機能なものが必ずしも必要だとは考えていないように思います。

実際、身の回りにある電子機器でも、それほど多くの機能を使っているかというとそうではなく、例えばスマホなどは
通話やメール、SNSやニュースなどの主要な機能を使う機会が多く、それらの機能で問題が発生すると、悪い意味で
気になりますが、あまり使わない機能であれば、それほど品質についても気にしていないように思います。

ユーザが求めているものがその製品にあるのならば、ずっと同じ製品を使い続けるはずなので、製品に本来あるべき品質とはどのようなものなのかについて、今一度考え直してみることをお勧めします。

ユーザに提供する品質は、「製品を利用するユーザが求める品質である」ことが何より重要なように思います。