品質管理の目的は、最終検査成績表を合格にすることだけではありません。最終検査成績表を合格させるために、社内リソースの消費を最小限に抑えることが、あるべき品質管理の姿だと考えています。しかし未だに、「完成品を再度工程に戻す」「不良の原因が分からない為、疑わしいロットを全て廃棄する」といった、 最終検査成績表のみに焦点を当てた品質管理を行っている工場が見られます。このような品質管理を行っていると、問題の真因にたどり着くことができず、いつかは取り返しのつかない問題を発生させる危険があります。
ここで、工場にて不良が発生した事象を例にとって、一般的な対応の流れを述べます。
工場で不良が発生した時のオペレーションは、大きく二つに分けられます。
①不良が影響する範囲を特定し、生産/出荷を停止する(トレーサビリティ)
②真因の特定と対策立案
問題が早期に発見され、影響範囲が狭い場合はさほど問題はありません。製造履歴から、対象製品ロットを絞り込むことは可能です。しかし、原因発生から数年経っており、影響範囲が広い場合は、その間に担当者の交代や、帳票の変更といったイベントが発生する可能性があります。したがって、即座に影響範囲の特定が難しくなり、安全の為に必要数以上に不良範囲と見做すことになり、製品・工数のロスが発生します。
この場合も、知見のある問題で合ったときは、経験(勘・コツ)により原因を即座に特定することが可能です。しかし、初めて発生する不良の場合はどうでしょうか。現在の製造業は、需要による頻繁なモデルチェンジや技術革新による製造方法の変更といった背景から、予想ができない問題が発生する環境になっています。原因のアテがつかない為、問題が発見された工程より前工程の情報を洗いざらいに確認します。(情報一覧:工程品質記録、稼働実績、保全履歴、アラーム履歴、投入工数etc)
これらの情報は、部門・工程が独自に管理しているため、現象と現象の関連を調べるのがとても困難になります。「異なるファイル形式で保存している」「使用している用語に違いがある」等、原因特定作業を阻害する原因はたくさんあります。
上記の問題を解決するために、弊社ではIT技術を用いたスマートファクトリーを提唱しています。
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紙ベースであっても一元管理できていれば、問題はないかと思いますが、現実的ではありません。
スマートファクトリーでは、製造現場に品質管理基盤を導入し、以下のような品質管理を実現します。
▶様々な情報を自動取得するための設備・センサを設置し、製造情報の自動取得
▶収集した情報を分析するためのツールを導入し、分析作業の簡略化
▶社内のどこからでもアクセス可能なネットワーク整備による、他拠点情報の確認
また、品質管理以外でも生産性において以下の様なメリットが発生します。
例 )
▶情報を自動取得するため、省人化の促進
▶詳細なデータを活用した、稼働率の向上
ここ数年、様々なメーカーでの不祥事がメディアを賑わしていて、中には工場が操業停止に追い込まれるものもあります。
これらの不祥事は、人的管理限界が露呈してきたものと考えることもできます。
一度自社の品質管理体制を見直してみてはいかがでしょうか。