Industry 4.0

「Industry 4.0」(インダストリー4.0)とは

ドイツが提唱している「Industry 4.0」(インダストリー4.0)の概略をまずは簡単に説明します。
図
Cyber Physical Systemの具体的な説明はこちらです。

ドイツ政府が「Industry 4.0」を進める背景は?

なぜドイツは国をあげてIndustry 4.0を進めるのでしょうか?その理由は大きく2つあります。

最先端の産業機器をドイツから生み出し世界標準とする

先進的な産業機器を、他国に先駆け開発し標準とすることで、産業機器の分野で世界をリードしていくためです。以前の第三次産業革命では、今や生産設備においてなくてはならない、PLCという製品が世の中に誕生しました。この製品を生み出したことで、シーメンスをはじめとするドイツの産業機器メーカーは、世界市場をリードし収益をあげることができました。ドイツとして今後もこの状況を維持するために、新しい波の先頭にいることが重要です。そこで、新しい波に対する取り組みを、国をあげて推進するということです。

製造現場をドイツに残していく

コストを理由に生産現場は新興国に流出していますが、そこには2つ問題があります。
アメリカなどでは、「頭脳、要は製品開発だけを国内に残し、付加価値が低い生産活動などは海外にある方が競争力を維持できる。したがって、生産活動を海外に移すことは合理的である」という考え方が主流です。しかしドイツはそうは思っていないようです。生産を行う新興国は、いずれ頭脳が生まれ競合相手になるとともに、生産をなくした国内産業はいずれ頭脳も衰えていくことになると考えています(生産と頭脳は製造業では切っても切り離せません)。
上記の2つの課題をクリアするために、ドイツは第四次産業革命を世界に先駆けて進めようとしています。そこで生まれた産業機器をドイツ国内の製造現場が使うことで、ドイツ国内の生産現場は競争力を維持することができます。

「Industry 4.0」の主要コンセプト

Industry4.0の主要コンセプトには大きく3つのモデルがあります。

1つ目はこちら


図1
製品開発~保守サービスまでの各プロセスを標準化することで、会社という枠を超えてビジネスが行えるようにすることです。それぞれの会社のプロセスが標準化されていることで、そのプロセスを国全体で、必要に応じて双方が利用することができます。自社の不得意なプロセスは得意な会社のプロセスを利用したり、稼働状況によって互いに補完しあったりすることで、生産性を最大化できます。
そのためには、全ての情報がネットワークを通して共有されなければなりません。つまり、全ての情報はデジタル化される必要があります。加えて、製品開発においてもA社での図面とB社での図面が同様に取り扱えるように、開発の手法についても標準モデルを採用することなどが必要となります。

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図2
製造業の中にある、全てのCPU、デバイスをネットワークで統合することです (弊社のスマートファクトリーのモデルの一部です)。
ここ20年のネットワーク化によって、会社の中での地理的な情報分断は解消されてきました。東京の在庫情報が北海道でも見えるようになったのが良い例です。しかしながら、スタッフ部門と製造現場では未だに情報の共有が行われていません。製造現場内にある情報の共有は皆無に等しいでしょう。産業機器メーカー間の壁や、生産設備そのものの機能不足といったことにより情報が分断されてきましたが、それらを解消し、様々な情報の共有を可能にしていこうということです。
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図3
将来、様々な製品がインターネットに接続されます。また様々なサービスも同様です。そのような世界を前提に、新しいビジネスモデル・製品・サービスを生み出していこうということです。そのためには、インフラの標準化や政府の規制の変更なども必要になります。
以上が、Industry 4.0を説明するときに頻繁に出てくるコンセプト図です。
イメージがすぐにつくものと、まだまだイメージさえも浮かばないものなどもありますが、今後5年~10年をかけ、具体化および実現していくことを目指しているようです。実現のためには様々な分野での取り組みが必要になります。現在は大きく8つの分野がKEYの分野として定義されており、ドイツを代表とするような企業がワーキンググループに参加し検討を進めています。
(説明は割愛します)
8つのKEYの分野

具体的な例

Industry 4.0は、2014年のハノーバーメッセにおいて大々的に取り上げられました。その模様を日本経済新聞が取り上げており、その中で各社の方向性なども書かれていたのでここに記しておきたいと思います。
BMW 取引先と連携して製造工程を監視
ダイムラー 電力価格の変動に即時対応する省エネ生産
ボッシュ 無線自動識別の工程管理
各社それぞれではありますが、比較的現在でもできそうなものが多いように見えます。先進的な取り組みは、社外秘ということもありそうです。
最近VWがモジュール化を大々的に推進しているのは、皆さんご存知の通りだと思います。これらの活動も、実はIndustry 4.0の活動と結びついていると考えるべきでしょう。デジタル化・標準化の取り組みが国をあげて同時並行的に行われており、VWの取り組みが完了した段階で、様々な分野から様々な商品・サービスが発表されるということになりそうです。
Industry 4.0が実現された世界では何が可能になるのでしょうか?
すぐに考えられるような事例としては、以下のようなものがあるのではないでしょうか。
事例

顧客からのクレームに基づき図面および生産履歴を解析する。原因が判明した時点で生産履歴から対象シリアルを特定し、インターネットにつながる製品であれば即座にユーザーに向けて保守対象であることを通知する。これらを、担当者が自身の机の上で1日もあれば実行できる。

現状でも同じようなことは各社で行われているはずですが、多数の人と長い期間が必要です。第四次革命の後は、これらが瞬時に行えるようになります。

さて、日本はどうする?

指をくわえてみているのでしょうか、それとも同様な取り組みを開始するのでしょうか?
業界としてのある程度の取り組みはありますが、国家として取り組んでいるという話は聞こえてきません。ドイツと日本との文化的な差や、産業の状況といったところに大きな差があるのもその原因ではないかと思われます。
産業機器分野では大きな存在力を持つドイツですが、人口は日本の3分の2程度です。日本に比べ、人口という武器では劣っていますが、人口が少ない分だけ国としてはまとまりやすいのかもしれません。
日本には産業機器メーカーだけでも何社も存在し、お互いに競合相手ですから、一致団結してというわけにもいかないのが実情でしょう。さらに、今や根拠も怪しくなりつつある「モノづくりでは負けない」という自信が、危機感を覚えさせないのかもしれません。
また、そもそも日本という国は、コンセプチュアルなビジョンを掲げ、それらを徐々に具体的なものに落としていくというトップダウンアプローチが下手な国です。同じことをやろうとしても、同じアプローチでは絵に描いた餅になってしまい実現は難しいでしょう。
一方で日本は、そこにある具体的な課題を解決して、それを積上げていくボトムアップ的なアプローチは得意です。そんなことを組織立って継続的に行えるのは、世界を見渡しても日本ぐらいなものでしょう。であれば、今後Industry 4.0の世界が実現されていく中で、日本の得意な面を引き出しながら、ドイツに負けないように世界市場をリードしていく製品をどう出していくのかが、鍵なのではないでしょうか。
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